第69話

純に大事な話があるから会いたいと連絡をすると、すぐに予定を立ててくれた。



大学が休みの日で、純が仕事の合間を縫って沙那の部屋へ来てくれることになった。



緊張した面持ちで座っている純に、沙那はお茶の入ったカップを差し出した。



「ありがとう」



純はそれを一口飲み、ほっと息をついた。



そのまま、気まずい沈黙がしばらくの間流れて――



「あ、あのね、スー」



「!」



意を決したように、突然口を開きかけた沙那の表情を見た純は、驚いて目を見開く。



真っ赤に染まった頬に、涙で潤んだ瞳。



胸の前で握り締めた右手の拳は、緊張のせいで小刻みに震えていた。



「私、スーのこと……」



そこまで聞いて、沙那の気持ちを――言いたいことを確信した。



好きな女の子に、それを先に言わせるようなことをしてはいけない――



「沙那!」



考えるよりも先に、言葉が飛び出していた。



「俺は初めて会った時からずっと、沙那が好きだ」



「……え……」



予想外の純の台詞に、沙那の言葉が止まる。



「もう沙那以上に好きになれる人なんか居ないと言い切れる程に、沙那が好きだ」



「……」



嬉しくて、沙那の瞳が涙で潤む。



「私も、スーのことが――」



「だが、沙那の俺に対するそれは、恋愛感情ではないと思う」



沙那の言葉の上から被せるようにして、純が遮った。

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