第68話

「告白しないの?」



間違いなく両想いなのだからすればいいのに、とは流石に言えないが。



「……スーは優しいから多分、私が好きって言ったら困らせちゃうと思う」



何故かフラれるのを前提に話を進める沙那。



「両想いかもしれないじゃん」



陽の台詞は助言を通り越しているが、本人はもどかしさのあまり気付いていない。



「もし、そうだとしても……スーみたいな人気のあるモデルさんが、簡単に彼女なんて作っちゃダメだと思うの」



「あ……」



あまりに身近な存在になりすぎていて、そのことをすっかり忘れていた。



「でもさ、沙那の気持ち伝えるだけでもしてみたら?」



きっとそれで確実に何かが変わる。



変化を恐れる気持ちも分かるが、このまま過ごすよりはいいのではないか。



少なくとも、陽はそう感じた。



「桐生君なら、真剣に沙那に向き合ってくれると思うよ」



「うん、そうだね……そうしてみる。陽、ありがとう」



陽を見つめる沙那の目には、強い意志が宿っていた。

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