第67話

あまりにもイライラした陽は、一緒に課題をやろうという口実を作って、学校が終わってから沙那をアパートの自室に呼び出した。



とりあえずは真面目に課題を進めていき、ひと段落ついたところでお茶を淹れる。



沙那にカップを渡し、自分も席に着いたところで、



「桐生君のことなんだけどさ」



本来の目的である話題を振った。



「!」



途端にびくり、と体を強ばらせる沙那。



「……やっぱり、陽スーのこと好きなの?」



恐る恐る訊ねてきた沙那の言葉に、陽の方がフリーズした。



この話題にあたしは関係なくね?



そう言いたいのをぐっと堪え、



「“陽も”ってことは、沙那は桐生君のこと好きなんだ?」



意地悪げに微笑んだ。



「えっ、あの……」



自分の失言に気付いた沙那はあたふたし始め、



「……うん」



顔を真っ赤に染めて頷き、そのまま俯いてしまった。



(……えー、何この子めちゃくちゃ可愛いんだけど)



この沙那の表情を是非とも桐生のヤツに見せてやりたい。



そう思わずにはいられなかったが、そこはぐっと我慢する。



「言っとくけど、あたしは桐生君のこと全然タイプじゃないから」



沙那の不安を拭ってやるのが最優先だ。



「……そうなの?」



「格好良いとは思うけど、実は年下の可愛い男の子がタイプなのよね、あたし」



……それは意外だ。



沙那は思わず目を丸くした。



「嫉妬してた?」



意地悪く聞いたのに、



「うん……少し」



素直に答えられてしまい、陽の方が恥ずかしくなってくる。

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