第57話

それは沙那が目の手術を受ける少し前のことなので、自分たちがまだ6歳の頃か――沙那の男性恐怖症を引き起こす原因となった事件が起こったのは。



当時、近所には子供の面倒見がいいことで評判の高校3年生の男子生徒がいた。



その日も、沙那と純と祐也を含む近所の子供たち5人が男子高校生の家に遊びに来ていた。



家の中でかくれんぼをするのがお決まりの遊びになっていたのだが……



夕方になり、その男子高校生は皆にもうそろそろ帰るようにとうながした。



またね〜、と手を振る男子高校生と子供たち。



だが、純はそのメンバーの中に沙那がいないことに気付く。



「沙那は?」



「先に帰ったよ」



男はにっこり微笑んでそう答え、さぁさぁと純を玄関へ行くようかす。



その時に、玄関の片隅に沙那がいつも履いていた赤い靴があることに気が付いた。



――沙那はまだ中にいる。



他の皆は男の言うことを信じて先に帰り始めていた。



純も一応は、皆に続いて男の家を出た。



直後、がちゃりと玄関の鍵のかかる音が聞こえた。



――怪しい!



「俺、忘れものしたから取ってくる」



皆にそう告げて、引き返した。



玄関の鍵は、やはりしっかりとかけられている。



「くそっ」



純は急いで庭から回り込み、鍵のかかっていない窓を見つけ、そこからこっそりと中へ侵入した。

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