第55話
食後のお茶を、皆で楽しんでいた時のこと。
沙那がテーブルの上に自分の湯のみをコトンと置きながら、
「どうしても皆に聞きたいことがあるんだけど」
真剣な眼差しで口を開いた。
「皆で観てたテレビとかにスーが映ってた時、なんでそれがスーだって誰も教えてくれなかったの?」
心なしか、ムッとした表情をしている沙那。
それは純も気になっていたことなので、黙って皆の表情を窺った。
いつか沙那が自分の存在に気付いて会いに来てくれるのではないかと期待していたから。
純の元に届いたファンレターも、沙那から来ていないかと毎度必死になって探していたから。
「だって姉ちゃん、スー兄のこと見てもカッコイイとも何とも言わなかったから」
一番に口を割ったのは、朔人だった。
「そうそう。カッコイイと思わない? って聞いても、うーんとか言うし」
咲もうんうんと頷きながら答えた。
「そ、それは……」
あたふたし始めた沙那に、
「姉ちゃんがスー兄に見惚れでもしてたら教えてあげたけど」
「興味なさそうな人に教えてあげても……」
ねぇ? と双子らしく息ぴったりで頷き合う。
「私は、沙那が純ちゃんのこと大好きなのを知っていたから、有名になったって知ったらショック受けるかしらと思って」
幸江は小さく挙手をして答え、
「俺も右に同じ」
弘貴も幸江に
「皆して酷い!!」
沙那はガタッと音を立てて立ち上がると、
「お父さんなんか大嫌い!」
部屋を出て、勢いよく襖を閉めた。
「なんで俺だけ!?」
その場に、父の虚しい声が響き渡った。
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