第54話

如月家に混じって純も同じ食卓で夕食を頂くことになった。



普段、唐揚げなどは大皿に載せて皆で分け合って食べているらしいのだが、純が遠慮せずに食べられるようにと、ひとりずつ皿に分けて盛り付けられている。



そして、双子の分は昼間の母の宣言通り1つずつ減らされ、それらは純の皿に載って大きな山を作っていた。



「「……」」



悲しそうな目で純の皿を見つめる双子。



「……」



純は多めに盛られた唐揚げ2つを双子に返そうかと考えたが、出された料理を他の人の皿に移すのは作り手に対して失礼なのではと悩み……なかなかはしを付けられずにいた。



「純ちゃん、遠慮しないでいっぱい食べてね!」



幸江は純ににこっと笑いかけた。



「はい、いただきます」



如月家のルールに、純が口を出していいわけがないので、ここはありがたく頂くことに決めた。



唐揚げを1口かじり――懐かしい味に、目を見開く。



純がまだ子供だった頃は、よく沙那の家でこうして晩ご飯をご馳走になっていた。



純の母が実は未婚のシングルマザーであること、そして純が今で言う所のネグレクトに遭っていたことを、幸江は風の噂で聞いて知っていた。



どうしても放っておけなかった幸江は、頻繁に純を家に招いた。



そこで初めて出したのが、今食べているのと全く同じ唐揚げで……純の大好物になった食べ物だ。



「どうかしら?」



1口食べて動かなくなった純に、不安になった幸江は恐る恐る訊ねた。



「美味しいです。とても」



お世辞でも何でもなく、本心からの言葉。



それが幸江にもしっかりと伝わったようで、



「そう。良かったわね、沙那」



何故か沙那へと話を振った。



「う、うん……」



ぎこちない返事に、純は慌てて隣に座る沙那を見る。



照れたように俯く沙那を見て、これは幸江ではなく沙那が作ったのだと悟った。



(2つ多い唐揚げを、朔人と咲に返さなくて良かったな……)



双子には悪いと思いながらも、全て美味しく平らげた純であった。

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