第48話

「お前が女に片想い? ありえねぇだろ」



「沙那に見目みめの良さは通じない」



「……」



自身の見た目の良さは否定しないのか。



少し突っ込みたい気分になった祐也だったが、確かに沙那は人を見た目で判断するタイプではない。



「でも、桐生が沙那をめちゃくちゃ大事にしてるのは誰から見ても分かるし、沙那だって流石に何か感じてるだろ?」



「沙那は俺のことを、誰に対しても親切で優しい奴だと思っている」



「え……」



「自分が特別だなんてつゆほども感じていない」



「……何だよ、そのもどかしい話は」



ぽつりと漏れた祐也の声に、純は露骨にムッとした顔をする。



「“もどかしい”という単語は、今流行っているのか?」



「は? ……もしかして他のヤツにも言われたの?」



「知らん」



即答した純は、突然すっと立ち上がり、



「邪魔したな」



きょとんとしている祐也を放置し、部屋を出ていった。



「え? あいつの逆鱗げきりんってどこにあるんだ!?」



基本的に穏やかな性格の純が何故怒ったのか全く理解出来ず、祐也は頭を抱えた。



「……このまま絶交、とかねぇよな?」



理由は分からないがとりあえず謝っておいた方がいいのか……



祐也は慌ててスマホを手にとり、純とのメッセージアプリのトーク画面を見つめて――送るべき言葉に悩んだ。

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