懐色。
第44話
カフェからの帰り道は、3人ともバスを使うことになった。
「今日は車じゃないんだね」
バス停でバスを待ちながら、沙那は思ったことを口にした。
沙那と陽の手には比較的軽めの紙袋が提げられており、和菓子などの重さのある紙袋は純が両手に提げている。
「あれは俺の車ではないからな」
2人分の重い荷物を持ち直しながら、純はなんでもないことのようにさらりと返した。
「そうなの!?」
それに大きく反応したのは陽だった。
「一応あの車のイメージキャラクターではあるから、普段から乗っていて欲しいと言われていてな」
大人の事情、というやつだろうか。
沙那と陽には少々理解しがたい内容である。
「他人の車を乗り続けるというのも気分が乗らないし、
何を言い出すのかという目で純を見つめる2人に、
「あの車の黒色を購入して、今は納車待ちなんだ」
事後報告をした。
「えっ!? もう購った後なの!?」
言葉を失った沙那の代わりに、陽が問いかけた。
「あぁ、現金で。ローンの利息も馬鹿にならんからな」
スカイラインを一括現金で支払うようなヤツが利息を気にするのか。
理解が追いつかない。
「車が届いたら、どこかに連れて行ってやろうか?」
純が楽しそうな笑みを、顔を引きつらせてドン引きしている2人に向けた。
「あたしは居ない方がいいんじゃない?」
陽はイヤミでもヒガミでも何でもなく、真剣な表情で純に耳打ちした。
「お前が一緒だと沙那が喜ぶだろう」
何を言っているんだこいつは、とでも言いたげな怪訝そうな目で陽を見下ろす純。
「……なんでアンタ達、これで付き合ってないの?」
第三者であるはずの陽だが、何故だか頭痛を覚え、右手で眉間を押さえた。
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