第39話

祐也あいつ、まーた彼女と別れたらしいよ」



強い日差しが降り注ぐ午後のひと時を、沙那と陽はカフェのオープンテラスで過ごしていた。



大学は、とっくに夏休みに突入している。



「……そう、なんだ……」



軽く俯いた沙那の視線が、テーブルの上のアイスティーのグラスへと注がれる。



お洒落な竹製のコースターの上で汗をかいているグラスの中で、大粒の氷がカラン、と涼し気な音を立てて崩れた。



その様子を黙ったまま見つめる沙那の焦点は合っておらず、きっとグラスの中身を見てはいない。



(重症だな……)



我ながら酷い話題を振ったものだと自覚している陽は、それでも友達として出来ることを考える。



祐也ヤツの酷い噂をわざと沙那に聞かせて、とにかく嫌なヤツなのだと、好きでいるべきではないのだと吹き込まなくては。



「沙那もさぁ、そろそろ他の男見てみたら?」



「え? 他の?」



「せっかく共学の大学入って、いろっんな男がゴロゴロ転がってるのに……しかも医者を目指してる将来有望な男どもが!!」



陽はぐぐっと拳を強く握る。



「沙那のこと、可愛いなって思ってる男子結構多いんだよ?」



それは嘘ではない。



沙那と仲がいいからといって、陽の元には沙那目当てで近付いてくる男子学生が複数居る。



「今度、合コンしよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る