第40話

「俺は反対だ」



突然背後から聞こえた低い声に、



「うわぁぁぁ!?」



陽は飛び上がり、



「スー?」



沙那は目を丸くした。



陽の後ろに立っていたのは、黒いキャップを頭に被り、紫がかった薄めの色のサングラスで目元を隠した純だった。



「な、な、なっ……!?」



驚きすぎて日本語を話せなくなった陽を、純は訝しげな目で見つめる。



「何故そんなに沙那に男を勧めるんだ?」



「……桐生君が行動に移さないからでしょ」



少しだけ落ち着きを取り戻した陽は、純をキッと鋭く睨みつけた。



「……」



「……?」



陽の言葉に純は驚いた顔をして黙り込み、沙那は意味が分からず小首を傾げた。



「女の失恋には甘いものと買い物、それでもダメなら新しい恋って決まってるの」



陽がむくれたように頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いた。



純はさり気なく沙那の方を見る。



丸テーブルを囲むように設置された4つの椅子のうちの空いている2つの上には大量の紙袋。



アパレルブランドの紙袋もあれば、有名洋菓子店のものや老舗和菓子店のものまで様々。



陽の言う“甘いものと買い物”である。



そして散財しても尚、浮かない顔をしている沙那。



「あぁ……」



陽なりに考えに考えて、それを試してみてもダメだったので更に絞り出した案なのだ。



「ダメ出ししてないで、桐生君も何か案出してよ!」

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