第33話
「……返してよ」
「お子様はお子様らしく、オムライスでも頬張ってろ」
純は、沙那の顔を見ることもせずにそう言うと、パスタをフォークに器用に巻きつけ、口に入れる。
そして、その綺麗な顔を思いっ切り歪めた。
「……チーズの味しかせんな」
「ぷっ……あはは!」
そんな純に、斜め向かいの席にいる陽は、思いっ切り噴き出した。
そして、純の隣でムスッとしたままオムライスを頬張る沙那は、
「……おいひぃ」
不服そうにそう呟いたのだった。
「何か、沙那と桐生さんって兄妹みたい!」
ちょっと空気が読めないのか、そんなことを言い出した陽に、沙那はスプーンを握り締めたまま、ますますムスッとする。
「……」
そして、何か言い返そうと口を開きかけた沙那は、ふと陽の言葉に違和感を感じ、動きを止めた。
「……スーも私達と同い年なのに、さん付け?」
沙那の至極当然な質問に、陽も至極当然のように返す。
「だって、あの桐生さんだよ!?」
“あの桐生さん”とは、どの桐生さんなのか?
沙那には、ちっとも理解できない。
純も沙那と同じ心境なのか、パスタを口に押し込みながら、不思議そうな顔で陽を見る。
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