第18話

「……」



沙那が皆からの視線に耐えられなくなってうつむくと、



「目障りだ、失せろ」



純がその女子達を鋭く睨みつけた。



「やだ、怖~い」



周りの人達が怯える中、純はそれを気にも止めずにキャンパス内を突き進む。



沙那は、その後ろを小走りでついて行く。



「スー、いいの?」



「何がだ?」



「その……今ので、ファンとか減ったりしない?」



沙那は、恐る恐る純の顔を覗き込む。



すると、純はフンと鼻を鳴らし、



「それならファンなんか要らん」



そんな罰当たりなことを言い出した。



「これが俺なんだ。直す気も起きんし、嫌いなら嫌いで構わんさ」



「……」



多分、彼のファンが減ることはないような気がする。



それくらい、純の堂々とした姿は格好いいのだ。



「沙那は、どの学科なんだ?」



突然そう尋ねられ、はっと我に返ると、純の手には沙那のものとは違う種類の参考書。



「看護学科だけど……」



「そうか……榊もか?」



「ユウは医学科だけど……ねぇ、スーももしかして医学科?」



純の白衣姿を想像して、一瞬だけ頬が熱くなる。



「あぁ、そうだ」



「お医者さんになるのが夢だったの?」



医科大学にいるのだから聞くまでもないことだが、純から将来の夢の話なんて聞いたことがなかったから……



それに、純は子供の頃から数カ国の外国語を話すことが得意だった。



それを活かすことの出来る仕事に就くんだろうなと勝手に思い込んでいたのだ。



「……俺の母親だった女のようにはなりたくなかったから」

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