第13話

そんな祐也の様子に気付いているのかいないのか、純はカップから唇を離すと、ふと祐也の方を見る。



「そういえば、いつから付き合ってるんだ?」



「……へ?」



いきなりの質問に、祐也は間抜けな声を出した。



「あのね、中3の夏からなんだよ♪」



と祐也の代わりに、沙那がにこにこしながら答えた。



その笑顔が、祐也のことが大好きなのだと主張しているようで、



「……」



祐也の顔から、不機嫌の色が薄れていく。



そんな祐也に、純は少しだけ口角を上げ、意地悪そうに微笑んだ。



「良かったな、榊。初恋が叶って」



「なっ……!?」



途端に祐也の顔は真っ赤に色付く。



そんな祐也を見て、純はニヤリと笑み、更なる追い討ちをかける。



「普通、初恋は叶わないものなのにな?」



「よ、余計なこと喋るなよ!!」



祐也が慌てたようにそう言うと、純はフッと笑みをこぼし、静かに立ち上がった。



「久しい友人の恋路を邪魔するのもなんだし、俺はそろそろ失礼する」



そして、口角を上げたままの表情で祐也の方を振り向き、



「じゃあな、榊。頑張れよ?」



そう言い放った。



「うるせーよ」



真っ赤な顔でそっぽを向く祐也。



そんな祐也の隣で沙那は、



「スー、もう帰っちゃうの?」



しょんぼりと純に尋ねた。



純はそんな彼女に、



「沙那、榊のことよろしく頼むな?」



頭をぽんぽんと撫で、優しく微笑んだ。



「紅茶、美味かったよ。じゃあな」



そして彼は帰っていった。

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