第11話

沙那の住んでいるアパートは、大学からバスで20分くらいの所にある。



ちなみに、沙那も祐也も田舎育ちのため、都会への憧れが強く、大学も都会にある所と決めていた。



そのため、2人とも実家を離れてアパートでの一人暮らし。



そのアパートに向かう途中の車内で沙那は、



「ねぇねぇ、なんであの時黙って引っ越しちゃったの?」



とか、



「モデルのお仕事って楽しい?」



とか、純に質問の嵐。



そんな沙那に純は、



「まぁ、色々とあってな」



とか、



「まぁ、そうだな」



とか、曖昧あいまいにしか答えなかったけど。



一方の祐也は、その様子が面白くないとでも言いたげに、開けた窓の枠に右肘を突いて、外の景色を無言のまま眺めていた。



そんな祐也に、沙那はすぐに気が付いて……



「ねぇ、ユウ?」



彼の方に真っ直ぐに向き直った。



「……ん?」



祐也が、ゆっくりと沙那を振り返る。



「一緒に見てたテレビとか雑誌にスーが出てた時、なんでそれがスーだって教えてくれなかったの?」



やっと話しかけられたかと思えば、またしても純の話題。



「……」



祐也は、露骨に顔を不機嫌そうに歪めて、また窓の外に向いた。



そんな2人の様子を、純はルームミラー越しに確認して、



「……」



後ろの2人には聞こえないよう、小さく溜息をついた。



沙那の家は、もうすぐ目の前。

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