第10話

「……で、どこへ行くんだ?」



運転席に座った純が、ルームミラー越しに後部座席の沙那と祐也を見る。



「えっと……考えてなかったな……」



と頭を掻く祐也の隣で、沙那がにっこりと笑みを浮かべる。



「私の家、来る?」



「……え?」



「……は?」



その笑顔に、男2人はそれぞれ固まった。



「……いいのか?」



純は後ろを振り返り、運転席の後ろに座る祐也に目線を合わせて確認を取る。



「……」



ちょっと拗ねたように黙り込む祐也の隣で、沙那は相変わらずにこにこしながら、



「実家からね、珍しい紅茶の葉っぱが届いたの。2人にご馳走してあげる!!」



と自慢げに言っている。



そして、隣でふてくされた表情をしている祐也に気付き……



「ユウ、どうしたの?」



彼の顔を不思議そうに覗き込んだ。



「……何でもない」



そんな沙那に、祐也は顔を背けて、そう一言だけ返した。



そして、純のセダンは沙那のナビのもと、ゆっくりと走り出したのだった。

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