第4話

沙那は、背中まで伸ばした栗色の髪には緩くウェーブをかけてはいるものの、化粧は薄めで、どちらかというと地味系の女の子。



ただ、少し変わっているのが……



彼女の瞳の色は、栗色ではなく、漆黒であるということ。



別に髪をカラーリングしたとか、カラーコンタクトレンズをつけているとか、そういう意図的なものではない。



実は、彼女は生まれつきの視力障害者。



髪色が薄いのに瞳の色が濃いめなのは、その瞳が他の人から移殖されたものだから。



移殖手術は彼女が小学校に入学する前にアメリカで行われたが、手術は無事に成功し、今では彼女も元気に生活している。



しかし、小学生になるまでは、色のない世界が当たり前だった沙那。



いくら術後から10年以上経っていると言っても、彼女にしてみれば、ものに色があること自体が感動的。



ことに桜に至っては、1年に1週間見られるかどうかくらい。



桜の傍を通り過ぎる度に、彼女は足を止めて見惚みとれてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る