春色。

第3話

ふわりと暖かく吹き抜ける風は、淡いピンク色の花弁を優しく運ぶ。



しゃがみ込み、足下に落ちたピンクのそれをそっと拾い上げた彼女は、立ち上がると同時に視線を上げる。



その彼女の見上げた先には、一心不乱に咲き乱れる桜の木々。



ピンク一色に染められた大学の門の前には、「入学式」の文字。



そして、真新しいスーツを身にまとった彼女――如月きさらぎ沙那さなも、今日から晴れてこの大学の一年生。



「沙那ぁ、早く来いよ~」



門の前で彼女を手招きしている彼の名は、さかきゆう



沙那の幼なじみにして、



「あっ、待ってよ、ユウ!」



沙那の初めての彼氏。


沙那は看護学科、祐也は医学科とそれぞれ違う学科を選んだものの、それでも彼と同じこの医科大学に入れたことが嬉しくて、沙那の顔は自然と緩む。



何もかもにわくわくするこの季節。



何かいいことが起こりそう♪

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