二周目④
*****
翌日。さっそく私は行動を開始する。
向かったのは王都内の、とある小さな教会。そこは、戦争や流行り病で親を失った子どもたちを収容する救護院も
「あら、
私の姿に気づいた貴婦人たちが、一様に笑みを
「ミラ゠カスパリア゠エデルガルトです。どうぞよしなに」
両手でスカートを軽くつまみ、
「あら……
ゴドフリー
改めて、ここは戦場なのだと私は自分に言い聞かせる。
社交界という、この世で最も
ただ、そうした努力を重ねてもなお、この国の人々のカスパリア人に対する敵意を前に、三年前の私はなすすべなく引き下がるしかなかった。
そして、今。
私は、新たな武器を携えて再びこの戦場に挑んでいる。一つは未来の知識。そしてもう一つは、必ず祖国を救うのだという断固たる意志だ。
「はい。殿下の
そう、心にもない返事で茶を
その翌日には、バルト伯爵夫人の
いくら慈善活動を
なぜ? こっちは嫌な顔ひとつせず(多分)、無害な追従笑いに
そうして、骨折り損を終えてようやく
屋敷の外であれ中であれ、私を
る。これは、そういう
ら祖国を救う闘い。
部屋に戻ると、私は、
暮れなずむ空の下では、庭の木々が黄昏時の
見事な長身。
クラウスには数日に一度、日中を庭の奥で過ごす習慣がある。どれほど本業が
一方で、私との夫婦関係は相変わらず有名無実の域を出なかった。政略のために
これが彼女――エレオノーラなら、事情は違っていただろう。
エレオノーラとは、現在は第二王子ロルフの
もっとも……今次の私に限れば、それ以前の問題が大きかっただろう。
ふと、クラウスが顔を上げるのが遠目に見える。その視線から
〝ここ〞のクラウスに罪はない。頭ではそう理解していても、未来におけるあの人の
不敬は百も承知だ。ただ、そうしなければ余計に無礼な態度を取ってしまいそうで、それが
そんなことを考えながら、ベッド下からビスケットを取り出す。どうせ、今夜の晩餐も食べられたものではないのだろう。
「……帰りたい」
ふと、そんな呟きが漏れる。……帰りたい。今はまだ健在な祖国に。その気になれば帰ることのできる、私の
「でも」
その祖国のためにこそ、私は闘わなくちゃいけない。
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