二周目①
目を覚ますと、やけに見覚えのある
クルミ材の黒く太い
かつて部屋付きのメイドに、あの果物は子孫
この
そう、確かにここは、私がエデルガルトに
「ん?」
そういえば、窓から
風を
雪深いエデルガルトでは、冬に入ると何カ月も
それは、一年の大半が晴天に
なのに。この気持ちよく
ふとドアの開く音がして、
相変わらず
「起きていたのか」
「え、ええ……ここは……?」
するとクラウスは、ただでさえ深い
「式の
「式? それは……婚礼の、で、ございますか」
「ああ」
他に何がある、と言いたげに
身を起こし、ふたたび部屋を
部屋には、書き物机と朝食用のテーブルセット、それから、今私が
いや、
あの花瓶だけは、ここにあるはずのないものだ。あれは
その花瓶が、なぜここに? いや、それを言うなら、あの結婚式も――。
まさか。
「
「今年は……ディレリア暦何年でしょう」
「三九五年だ。それが何か」
当然とばかりに返された答えに、改めて私は
それは、今から三年前、私が祖国カスパリアからここエデルガルトに嫁いだ、まさにその年だった。
*****
クラウスとの二度目の結婚式から十日が過ぎた。
その間、私は、こっそり
陰口なんて、この三年、それこそ
そうして得た答え。やはり〝ここ〞は、三年前のエデルガルトで
単に予知夢として、三年分の未来を見せられただけなのか。それとも、何らかの事情で
に起きる出来事の記憶を
かつては南方のアデルネ海を
だが
きっかけは、エデルガルト第二王子ロルフの死だ。
エデルガルトには当時、三人の王子がいた。第一王子で王太子のギルベルト。第二王子ロルフ。それから、私との政略結婚を強いられた第三王子クラウス。
その第二王子ロルフは、とにかく血の気が多いことで有名で、戦いと聞くや手勢を引き連れ、
ところがその最中、ロルフは思いがけない不運に
それだけなら、不幸な事故ということで話は片付いただろう。
しかし
王子の死。それも
その後の展開は、まさに電光石火だった。
王太子ギルベルトを総司令官に
住民は、貴族も皇族も動ける者はすべて
こうして、私の祖国は地図の上から姿を消し、私も、その政治的な価値を失った。
ただでさえ
やがて、教会に私たちの
〝ここ〞、つまりディレリア暦三九五年に、なぜか、いる。
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