第43話

ガバッ………



「谷崎くんっっ!」




悲鳴のように彼の名を叫んだ直後、興奮状態のまま勢いよくベッドから起き上がった。




夢の延長線上で消えてしまった彼を探すように辺りをキョロキョロと見回したけど…。

目の前の光景は、いつもと何一つ変わらない高校生の現在の自分の部屋。




「また……、あの夢か」




徐々に頭が回転していくと、先ほどまで見ていた光景が夢だとわかる。

現実に戻るとため息混じりで肩を落とした。




また、あの当時の夢を見ていた。


何度も繰り返される、小学六年生の時の彼とお別れをする夢。

特にラストシーンがリアルに蘇っている。




夢と現実が判別できないほど、頭の中はあの頃の事を鮮明に覚えている。

夢を見た時は再び彼に会えるのではないかと淡い期待を抱いてる自分がいる。




夢でも彼に会えて嬉しい。


何度も同じ夢を見るという事は、未だに初恋に終わりを告げていないのかもしれない。




……いや、まさかね。


あれからもう何年も経っているのに、まだ恋心を抱いてるだなんてあり得ないよね。

きっと彼も私の事なんて忘れて、新天地で新生活をスタートさせているに違いない。




愛里紗はうなだれながら目を擦ってベッドから立ち上がると、部屋の扉を開けて洗面所に向かった。








私達は別れを惜しみながら引き離されるような別れ方をしたけど…。

あの時約束していた手紙は未だに届いていない。



きっと、部活や勉強など新生活に忙しい日々を迎えしまったせいで、手紙を出す事を忘れてしまったのだろう。



だから、彼が今どこに住んでいるのか、元気に過ごしているのか、私の事を覚えているかなど、彼に関する情報が未だに入ってこない。

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