私が知らなかった蓮の姿

第14話

先生は例え自分に嫌な事があっても、感情的になったりしない。

そこが、少し物足りなかったりもして…。




『何となく…いや、俺の勘なんだけど。』


「なぁに?」



『柊くんってさ、梓に気があるんじゃないの?』




しどろもどろ話す先生に蓮の気持ちを見透かされたと思って、ビックリするあまり心臓が飛び出しそうになった。




「へっ?…何で?」




ズバリまさかの正解なのだが…。

先生を気遣って、わざとすっとぼけた。




『普段はあんなにいい子なのに、今日は梓が一人で職員室に行くのを嫌そうにしていたから。』


「プッ、やだなぁ…。柊くんがいい子だなんて。」



『去年担任をしていたから彼の事はよく分かっているんだけど、勉強面ではクラスでトップだし、提出物は遅れた事がないし、素直だし、愛想がいいし、他の先生にも好かれているし。』


「えっ…、あの蓮が?」



『ひょっとして、柊くんの事を蓮って呼んでるの?』


「あっ、ごめん。(しまった!)」



『彼は先生達の中でも好かれてるよ。』


「…そう、知らなかった。」




つい癖で蓮の名前を呼び捨てしてしまった。

慣れというものは、非常に危険だ。





でも…。

バカでエロで意地悪な蓮が、クラスでトップの成績?

信じられない。



レベルの低い会話に、野性剥き出しの本能。

それに、夜遊びばかりしているから、すっかりバカだと思い込んでいた。


テストの答案を返す先生達は、彼を褒める事なく『前回よりちょっとだけ点数が落ちたな。』しか言わないからわかんないや。



蓮ってさ、勉強するんだね。

へぇ、意外。

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