大人な対応

第13話

「先生、今日はごめんね…。なかなか連絡が出来なくて。」




蓮と別れて自宅に避難してから、急いで先生に電話をかけた。

電話なら、謝罪もすんなり出来ると思ったから。




蓮は、あの後自宅にまでついてきた。


私を紳士的に家まで送り届けたつもりなのか。

それとも、本気で私と先生の仲を引き裂くつもりなのだろうか。


…いや、彼の選択は間違いなく後者だ。






『いいよ。連絡出来ない事情があったんでしょ。』


「あ…うん。」



『その代わり、何処かで必ず埋め合わせしてね。』


「勿論!絶対、ぜーったいするからね!」




先生はいつも冷静で大人。

心が狭い誰かさんとは違って、目の前で彼女の肩を抱かれたくらいでは簡単に動揺しない。




これが蓮なら、間違いなく相手の襟元を掴んで拳を上げるだろう。

2年間彼女だった私には、大体の予想がつく。




「先生…。」


『…うん?』



「柊くんに、ヤキモチ妬いちゃった?」




あの時、困った表情をしていた先生の気持ちを探った。

勿論、先生にはヤキモチを妬いて欲しい。




『妬いたよ。だけど、教師という立場上、校内で逆上なんて出来ないし。』


「…うん、わかってる。」




それは、私にもわかってる。


…だけど、今まで男は蓮しか知らなかったから、平静を装う先生にはもう少しムキになって妬いて欲しかった。




この対応が正しいのか子供の私にはまだよく分からないけど、先生の冷静さがたまにもどかしく感じている。

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