戦線布告?

第10話

ドンッ………




「…あ、悪りぃ。」




調子に乗って後ろ向きに走っていた蓮は、職員室前の廊下でぶつかった相手にすかさず謝った。


しかし、ぶつかった相手の顔を見た途端、私達二人の目は飛び出してしまうほど仰天した。




蓮がぶつかった相手…。

それは、私の彼氏である高梨先生だった。


先生は、仲良さそうにじゃれ合っている私達を、何も言わずにクールな表情でじっと見つめていた。




「センセー、ちょうど良かった。はい、全員分の数学のノート!」




蓮は手元に持っていたクラス分のノートを、高梨のお腹を目掛けて勢いよく押しつけた。

すると、高梨はキョトンとした顔でノートを受け取る。




「じゃ、梓。行こうぜ〜。」




蓮は身軽になった手で、馴れ馴れしく梓の肩を組む。




「ちょっ…ちょっと……。蓮…。」

高梨の目を気にする梓は、すかさず動揺。




蓮は私の考えなんてお構いなしに、ガッチリと肩を組み職員室前の廊下を離れていく。


彼の突拍子もない行動に焦ってチラッと横目で先生の方を見ると、先生は困っている表情を隠すかのように手で口を覆っている。




その時、梓は気付いていなかったが、蓮は横目でニヤリと勝ち誇ったような表情を高梨に向けていた。




先生は、私と蓮が付き合っていた過去を知らない。

だから、今日はヤケに私にまとわりつく蓮の行動を見て、一体どう思ったのだろう。

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