邪魔に入る元彼蓮

第8話

蓮から衝撃の一言を告げられた翌日から、馬鹿正直でまっしぐらな彼の行動が波乱を招く。




キーン コーン カーン コーン




「…じゃあ、今日の授業はここまで。」




6時間目終了のチャイム音で、私の彼氏である高梨先生の数学の授業が終わった。




数学の授業の時は、勉強どころか先生しか見えていない。

うっとりした目でラブビームを送る。

彼の心地よい声を聞いてるだけ。




…でも、実は数学が苦手。


だから、デートの時にマンツーマンで教えてもらっている。

先生は一生懸命教えてくれるけど、それでも理解できないから、どうしても数学が好きになれない。


だけど、大学受験に数学は欠かせない。

困ったものだ。




「今日の日直は…えーっと…菊池だな。みんなのノートを集めて、私の所に持って来なさい。」


「あっ…ハイ!」




先生が日直当番の私にこう言う時は、だいたい密会デートのメモを渡す時。

だから期待で胸がドキンと弾んだ。


だが、ノートを集めようと席を立った瞬間、蓮は突然後ろの席からピンと手を上げた。




「センセー。」


「ん…、ひいらぎ。何だ?」



「俺も手伝いまーす。」


「ノートはそんなに重くないから、日直の菊池だけで充分だよ。」



「へぇ~。せ~っかく優良生徒が手伝おうとしているのに、先生は俺が男という理由で断ろうとしてる訳?先生と女子生徒が校内で2人きりになってるって噂が立ったら困るんじゃないの~?」



冗談交じりに言った蓮の一言で、教室中はドッと笑いに包まれた。




…しかし。


笑っていないのは私と先生と蓮の三人だけ。




私達の関係が、蓮にバレていると気づいていない先生。

わざと先生に嫌味を言う蓮。

それを黙って聞くしかない私。



チラッと上目遣いで先生の方を見ると、口元が苦笑いをしている。




「柊…。率先して手伝おうとしてくれる気持ちは嬉しいけど、お前だけ特別に成績を上げられないからな。」


「はーい。」




先生はため息をつくと、蓮の一言で引き下がる事にしたようだ。




結局、蓮に邪魔された事によって、今日の密会の連絡が出来なくなってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る