馬鹿正直

第7話

話を一方的に切り上げてその場から逃げようとしていたけど…。


まるで手錠をかけられたようにガッシリ手首を掴まれてしまったせいで、逃げようとしていた足を止められてしまった。




「俺…、うっかりしてたわ。」




そのセリフを背中越しに聞き取り、驚きながら振り返ると…。


彼は俯いた表情を隠すかのように、私の手首を掴んでいる反対側の手で自身の顔を覆っていた。




「…いつかはお前がまた俺を許してくれて、やり直してくれると思っていたけど。…何だ、この気持ち。許せねぇ……。俺、おまえにいく事にするわ。」


「…えっ?」



花音かのんに付き合ってくれって言い寄られてて、最近どうしようか迷っていたけど…。やっぱり花音と付き合うのやめる。俺はお前とやり直したい。」




彼は顔から手を外すと少し寂しげな目を向けて、突然復縁のセリフを口にした。




蓮…。

今さら何を言ってるの?

私達、半年前に別れたんだよ。

理由はあんたの度重なる浮気だよ。


正気なの?

今さらやり直したいと言われても、私は高梨先生と付き合っているんだよ。




「蓮…、何言ってるの?さっき見たんでしょ、私と先生の事。それに、どうしていつも計画性がないの?もう私とは別れたんだから、遠慮なく花音とつきあえばいいじゃん。」


「別に花音の事が好きな訳じゃねぇ。」



「ふざけないで!今さら何?蓮とはもう付き合えないよ。」


「いや。俺、今から高梨に戦線布告してくるわ。」



「いま私の話聞いてた?そんな事したら、先生との関係が他の人にバレちゃうかもしれないじゃん。」


「でも、高梨からお前を返してもらわねーと。お前は心がどっか迷子になっちゃっただけだろ?そろそろ俺んとこ、帰ってこいよ。」




蓮はいつも一方的。


昔からそう。

計画性がない。

強引で馬鹿正直。




だけど…。

半年前に別れた私の事を、未だに想っていてくれていた。

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