喧嘩腰な私達

第6話

でも、当時彼女だった私を散々傷付けたクセに、浮気をした自分のことを棚に上げて私を責め立てるのは虫唾が走る。




「お前さぁ、本当は高梨と付き合いたかったから、俺と別れたんじゃねーの?」


「…いい加減にして。まだ反省してないの?自分が悪いクセに、自分の都合のいいように解釈しないで。」




友達として関係がようやく回復してきたのに、蓮が卑屈になるからつい自分もムキになって再び喧嘩腰になってしまう。





ーーだけど。


正直、これ以上関係を拗らせたくなかった。




口を尖らす彼は、いつになく必死で私とぶつかり合う。

頑固な私もつい意地を張ってしまい、別れ話をしたあの時のように、簡単には引き下がれない。




「いま何で俺がここにいるか分かるか?」


「そんなの、私が知る訳ないでしょ。」



「お前を見かけたから話をしようと思って来たんだよ。少しでも関係修復しようと思って、見かけたお前にのこのこついて行ったら、見たくねーもんまで見ちまったんだ。」


「バカ!趣味悪っ。覗き見なんてしないでよ。」



「だから、今見たくねーって言ったばかりだろ。」




激しく言い合っては、沈黙。

また言い合っては…。



これじゃあ、まるで痴話喧嘩。

蓮とはもうとっくに別れてるから、今さら言い争っても無意味なのに。

せっかく友達に戻ろうとしていた努力が、全て水の泡になるじゃん。




梓は蓮との関係をこれ以上悪化させたくなくて、話に区切りをつけるかのように背を向けた。




「とにかく…。黙っていてね。…先生との関係がバレたら、退学になっちゃうから。」




背中越しに一方的にそう言い放ち、その場から離れようとして三歩足を進ませた途端……。

蓮は逃げようとしていた梓の手首をガシッと力強く掴んだ。

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