蓮の眼差し
第5話
震え立つ肩に手をかけていたのは、高一の初めから半年前まで付き合っていた、元カレ蓮だった。
「蓮………どうして。」
「お前…、正気か?あいつ教師だろ。」
驚いていたのは私だけじゃない。
見つめている蓮の瞳の奥も、イケナイ関係を続ける私を疑う眼差しだ。
ひょっとして…。
先生と密会していた事がバレた?
蓮……。
一体、どこからどこまで見ていたの?
梓は気まずさのあまりジワリと冷や汗を滲ませながら、真っ直ぐ目を向けている蓮から目を背けた。
今までずっと怖かったのは世間の目だったけど、過去に愛した彼の瞳さえも今は冷たく怖く感じる。
「…蓮には関係ないよ。」
「あいつとの関係…バレたらお前…、学校はどーすんだよ。退学かもしれねぇよ。」
「私の事は放っておいて。見なかった事にしてよ。…お願いだから。」
「…はぁ?マジで言ってんの?」
梓は自分を心配してくれている蓮の手を、パシンと勢いよく払いのけた。
「蓮の方が最悪じゃん。私と付き合ってても浮気ばかり繰り返していたし。」
「そんなの、若気の至りだろ。…それに、その事は別れる前に何度も謝っただろ。」
「バカじゃないの?何が若気の至りよ。笑わせないで。私になんて、もう構わないで。」
別れてから半年経って、最近ようやく友達として普通に話せるようになってきた。
その間、彼の浮気がどうしても許せなかったから、同じクラスであっても一言も会話を交わさなかった。
お互いの事はお互いが一番よく分かっている。
だからこそ、蓮は別れた今でも私の事を心配しているのであろう。
蓮の心配そうな眼差しや勢いづく声が、秘密の恋愛を続ける私の胸に強く突き刺さる。
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