第4話

中学二年生のクラス替えで、初めて牧くんと同じクラスになった。

 イケメンで頭もいいと有名な子だったので、顔だけは知っていたけれど、同じクラスになってもなんの接点もない。

 だって私は頭もそんなに……、いや、だいぶ? 良くないし、席も近くにならないから、話すきっかけもなかった。

 こうやってまともに話したのは初めてかもしれない。

 初めてのきっかけが、こんなんなのはちょっと悲しい。

 だって人間って第一印象大事じゃない?

 私、遠雷も知らないし宿題丸写ししてる頭の悪い子だと印象づけちゃったと思う。

 小さなため息をついた私は、牧くんの視線を感じて顔をあげた。

 目の前に座る牧くんが私をじっと見つめて、そして。


「三原って六月? 七月?」

「なにが?」

「誕生日」

「なんで、わかるの!?」


 もしかして牧くんってば、私のこと……?

 え? もしかしてなの?

 ドキドキしながら息を止めた私に。


「三原の名前。紫陽花あじさいって、この時期キレイに咲くし、だからかな? って思ってた」

「あ、あー、そう、そうなんだよ、七月生まれ」

「当たった」


 ピッと嬉しそうに親指をたてた牧くんに苦笑い。

 とんでもない勘違いをしてしまうところだった私、どんまい!

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