第14話

「それが......今朝から状態が悪いんですって。それで心配になって」


そう言うと綾瀬さんはうつむいた。


......こういう人には、なんて声をかければいいのだろう。


俺はユウの死を経験している。


でも、俺は一人だった。


心を支えてくれるような人はいなかった。


「でも、貴方には家族がいる。支えてくれる」


綾瀬さんの顔の曇りが少し晴れた。


「人は、なぜか共感し合うと少し楽になれる。心を強く持ってください」


綾瀬さんは、少し笑った。


「......ありがとう」


そう言って病室を出ていった。


その時、やっと気づいた。


入り口にユウがいる。


なんとも言えない表情をしている。


ユウは、病室を出た綾瀬さんについていった。



――支えてくれる。――



――心を強く持って――



まさか、俺の口からこんな綺麗事が出るなんてな。

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