第65話

退院の日、俺はすべて仕事を終わらせ、迎えに行った


(ガラガラッ)


「おはよう 葵衣」


そういいながら、唇に口づけをすると


葵衣は嬉しそうに微笑みながら「おはよう」と返事をする


「準備はできたか?」


「うん!」


「じゃあ、帰ろうか俺たちの家に」


葵衣の荷物を手に待ち病室を出る


葵衣は看護師や主治医の田中に挨拶をする


田中と笑顔で話す葵衣の手を無理やり引っ張り


病院の外に出た


「おかえりなさいませ 若、葵衣様」


と笑顔で迎える綾人


運転手の組員に荷物を渡し、車に乗り込む


「出せ」


俺の一声で走り出す車


「どこに行ってるの?」


「本家」


「なら何か手土産買っていかないと」


「今向かってる」


「ねぇ、怒ってるの?」


葵衣の問いかけを無視する


「ねぇ、ねぇってば!」


俺が無視することが気に食わないのか語尾を強める葵衣


本当はすぐにでも抱きしめたいが、そうはしない


葵衣は俺が一切、反応しないからか俺の背中に抱き付き俺の耳元で囁く


「なんで怒ってるの?顔見せてよ」


こいつ、どこでそれを覚えたんだ


葵衣の声に反応してしまう俺


「自分が何をしたかもわからないようだな」


葵衣に向き合いまっすぐ見つめる


(チュッ)


俺のことを見ていた葵衣は一瞬だけ口づけをしてきた

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