第59話

私が目を覚まして数日がたったが、翔貴さんは、ずっと病室にいる


以前は、ほとんど家に帰ってこないくらい忙しい人なのにいいのだろうかと不安になる


「翔貴さん。」


「どうした葵衣?」


「お仕事は行かなくていいんですか?」


「あぁ、しばらくは行かなくていいことになったからな。ずっとお前のそばにいるよ」


と、女なら誰でも落とせるような笑顔を向ける


なんだろう、今までと違いすぎて、頭が追い付かない


(ガラガラッ)


「若、嘘を付かないでください!仕事が溜まってますので、そろそろ仕事してくださいね。」


と黒い笑みを浮かべながらやってきたのは側近の綾人さん


「ちっ、いいタイミングで来やがった。」


「葵衣様も、若に仕事に行くように言ってください。」


そういわれても、私が言ったところで行くわけがない


「葵衣様、お願いします。」


綾人さんが必死に頼むので断れない


「翔貴さん、綾人さんもお願いしてるんですからお仕事に行ってきてください。私は大丈夫ですから。」


「嫌だ」


「翔貴さん」


「嫌だ」


「翔貴さん」


「嫌だ」


さっきからこの人は子供のように嫌だとしか言わないこれが西宮組の若頭なんて大丈夫なのかと心配になってきた


これをどうしたらいいのかと思っていると綾人さんが近づいてきて耳打ちをする


「じゃあ、お仕事に行くなら、翔貴さんのお願いを1つだけ聞いてあげます。」


綾人さんから提案された通りに言ってみると、翔貴さんの顔が明るくなった


「いいのか?本当になんでも聞いてくれるのか?」


「えっ、な、なんでもとは言ってません!聞いてあげれることを1つだけです!」


そういうと翔貴さんは「うーん」と考え出した

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