第54話

夕貴side


結衣は私の1番の親友


どんな時も結衣が私を助けてくれた


だから、あの時は私が結衣を支えなきゃって思ってた


結衣と新は結婚してもなかなか子供を授かれなかった


2人が結婚して8年がたったころに妊娠が分かって私も嬉しかった


でも、その幸せは長くは続かなかった


葵衣が生まれる2か月前に父親の新が亡くなって、それからしばらくして結衣のお父さんも亡くなって


結衣はまだ赤ちゃんの葵衣を連れて町から離れた


結衣たちがいなくなって4年後の冬に突然、結衣がうちにきたの


「ごめん。ユウ、しばらく居候させてくれないかな?」


「結衣!いきなりどうしたの!?葵衣ちゃんは?」


「葵衣なら、龍之介に預けた。もう一緒に暮らせないから・・・」


とりあえず、ここは寒いからといって中に入れて話を聞く


「今まで、どこにいたの?」


「新と父さんが死んで、家も無くなって私は葵衣と町を出て、隣県にアパートを借りて普通に働いてたんだけど、1年前くらいに体調を崩して病院に行ったの。そしたら、癌だって診断された。しかも見つかった時には転移もしていて、手術もできないって言われたわ。」


結衣の話を聞いて私は声を荒げた


「なんでもっと早くきてくれなかったのよ!!」


「ごめん」


「それで、他の治療はしているの?」


「放射線治療も抗がん剤治療もしたけど効果はなくて、先月、余命1年だって言われた。」


「いっ、1年?ほんとうに1年なの?」


「うん。ほかの治療を試してみて効果があればもっと長く生きれるかもしれないって言われたけど、私が死んでも葵衣が成人するまでに必要なお金くらいは用意しておきたかったから、治療はやめた。だからもう1年もないかもしれない。」


と泣きながら言ってくる結衣に対して私はただ強く抱きしめながら言った


「大丈夫、結衣には私たちがいるから。治るまでここにいていいから。葵衣ちゃんも一緒に」


というと首を振る結衣


「葵衣とは暮らさない。葵衣には弱っていく私を見せたくないの。だから龍之介のところに養子に出したの。」


「それで、本当にいいの?」


「うん。だって葵衣にはいつまでも強くて、優しいママだって思ってもらいたいからいいの。」


そういってほほ笑む結衣をみて、私は結衣を支えようと決めた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る