第46話

◆朝と決意



『だから言ったんだ。私の力で流行り病なんて取り除けば良いと。』


『この病気で死んだ人、それで悲しんだ人が沢山いるのに、私だけ助かるのは違う気がするんです。』


『お前は人が善すぎる。……何か望むことは無いのか?』


『リッタ様が叶えてくれるんですか?…ふふ。』


『勇者…。』


『最期に私の名前を呼んでほしいです。そして待ってるって言って下さい。』


『“待ってる”って?』


『私はきっと、あなたに逢いに生まれ変わるから。』


『……。』


『あなたに見付けてもらえるように、また勇者としてが良いなぁ…………』



「……。」



夢か。リッタは目を開く。


眼の前にはいくつもの傷跡がある男の胸があった。

同じように傷跡がある腕が自分を大切そうに抱き締めて迎える朝だった。


あぁ、そっか。

リッタはウィードと同じベッドで眠った事を思い出す。



先代の勇者はリッタの目の前で息絶え、新しい勇者は100年程の後に奴隷の息子として生まれて魔族の雌に拾われた。



リッタはウィードに“勇者たるもの”と語ったことは有っても、100年前に死んだ前勇者を重ねた事は無い。

前勇者とウィードはどこをどう重ねようと思っても重ならない。


リッタはウィードにそのことを話さない。

なぜならリッタの浅海には澄んでいてほしいから。

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