第39話

「へ?」


「あ?私を討つつもりだろう?」


「なんで俺があなたを討たないといけないの?いや射ちたいけど。」


「ん?今うちたいと言ったじゃないか。」


「性的な意味でならね。」


「ふ、ふざけるな!お前は勇者としての役割を全うするつもりで来たんだろう?!だから先にゴドフリーを殺し………え?違うの?」


リッタはウィードのなんとも言えない顔に、勘違いをしている可能性を感じて戸惑う。



「だってあなたが言ったじゃないか。“勇者になりなさい。”って。」


「それはそうだ!お前が人として幸せに生きていくために親離れも魔族離れも必要があるからな。」


「てっきり歯車として俺と戦いたいのかと思ってた。」


「馬鹿言え。いつか勇者としてのお前と対峙するとき、魔族と人間が共存できる世界を目指そうと言うつもりだった。

そもそも百年前の勇者ともそういう話になってたのにあのオスカブルグ王が反故にしたんだ。それを後々お前にも話そうと思ったが、アンジュを褒賞として娶ると聞いて言い出せなくなった。

だからお前はアンジュを娶るため、私はお前を生かすために、戦っても良いと思っていた。」



リッタは胸の内を明かした。

ウィードはブルーグリーンをまんまるにしているが、眉は下がっていた。



「…どういう意味?!俺がアンジュを嫁に貰いたいがためにあなたを殺そうとするって思っていたの?!いつから?!」 



両手それぞれを握られ覗き込むように問われた。

痛みはないものの振り解けないほどには力が籠もっていた。



「逆に、お前はどうするつもりでいたんだ?」


「適当にやって、ごめんなさい無理でしたって言う。……ごめん、嘘。オスカブルグ王を討つ気だった。あいつは碌でもない狸親父だ。


だからさっさとを殺しても良かったけど、歯車論大好きなリッタ様が納得してくれなきゃ意味がないから、だから旅してこんな回りくどい事をしていたのに。

どうしてアンジュが出てくるんだ。


俺が唯一ほしいのは、リッタ様だよ。」

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