第38話
リッタの目の前にきたウィードはそっと小さな手を取るとその甲に唇を触れさせる。
それを見下ろしながら、リッタはもどかしい気持ちになりながら言葉を待った。
「“今夜ウィード来ないのかなぁ?”って聞こえた時はもう…、誘われてるような気分になって瞬間転移を堪えるのに大変だったよ。それとも誘ってた?」
「なにを?!っていうか、そんなわけないだろう!ウィーがウィードだなんて…。あの部屋では私以外に魔術が使えないはずだ!」
「ねぇ。俺がどれだけ魔力上げ頑張ったと思ってるの?」
ウィーには魔術が施されていた。
特定の言葉でウィードがウィーの目玉から見える景色と耳からひろえる音を認識できるように。
しかしそれではバレてしまう。
だからウィードは、ウィーから感じ取れる自分の魔力や魔術がリッタに認識されないようにする魔術を施した。
自分の魔力をリッタの魔力で咲く薔薇と共有をする事で薔薇を介してリッタの魔力を使う事にも成功している。
それらは10歳の頃からずっと勉強していた術だった。
薔薇を介した魔力はリッタ自身のものだから気づく可能性は低く、城内のセキュリティにはあまり関心がないリッタならウィーに掛けられた魔術にバレない可能性は高い。が、賭けだった。
本当はそこまでして駄目ならリッタにバレても構わなかった。ウィィードは自分の恋情まで欺くつもりはない。
え?じゃあ私がウィードって呟いたりしたら、ウィードが来てた事と変わらないじゃない!
あっさり種明かしされてリッタの顔が色を失う。
ウィードはそっと肩に手を触れさせると、そのまま優しく抱き寄せた。
放心しているリッタはなされるがままだ。
「あなたの貫禄ある口調もなんか可愛い女の子が強ぶってるみたいでエロいけど…」
「……はっ?エロい?!」
リッタは我に返ると慌てて突き放す。
ウィードはあっさり離れた。
「うん。でも一人で喋ってるときも等身大の女の子みたいで好きだなぁ。」
あああああ!!言わないでぇぇ!!
リッタは心のなかで叫んだ。
恥ずかしくて死ねる!
「も、もういい。もう終わることだ。さぁ、剣を抜け。」
リッタは魔王として気力を振り絞る。
高らかに言い放つ。
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