第37話
吹き飛ばされるようにリッタの上から床に転がったゴドフリーはびくびくと痙攣させていた。頭から血がしぶいていた。
リッタはすぐさま立ち上がる。邪魔なゴドフリーの身体を足で退かした。絶命しているらしかった。
ウィード目掛けて手をつき出す。
数え切れないほどの細い水の針が矢の様に鋭くウィードへ放たれる。
ウィードは唇をわずかに動かした。
白い光の防御壁がウィードの前に現れて水の針を吸収した。
一歩、ウィードがリッタに近付く。
同時にリッタによって黒い無数のもやが宙に現れた。
ウィードの周りに集まったかと思えばウィードを完全に包み込んだ。
このもやは包んだ全ての生物を拘束して魔力を奪い取りリッタの魔力へと転換させる。
「…だろうな。」
リッタは眉をひそめる。しかし口元は笑みが浮かんでいた。
黒いモヤは溶かされ青い光を纏ったウィードが出てきた。
ウィードはゆっくりと近付いてくる。
その表情からは何も読み取れず、リッタは困惑している。
「誰も来ないよ。」
「何故……。」
「俺がそうした。」
さらなる攻撃を仕掛けてもウィードが本気になれば意味がないかもしれない。
ウィードを殺すくらいの気概は今のリッタには無い。
沈黙に耐えかねてなにか言わなきゃと慌てて口を開く。
「俺がそうしたって…。壁を壊したり、好き勝手するな!」
「…
「……遅かれ早かれ私が殺していた可能性も有るしな。」
いつもの調子が出ないリッタは血溜まりとウィードを交互に見た。
ウィードの様子から、ゴドフリーに抱かれても良いやと思ったことは言わなかった。
「お前、なんかタイミングが絶妙すぎないか?」
「まぁ時間の問題か。」
ふぅと溜め息を吐いたウィードに先程の剣呑さは見られない。もういつもの調子だった。
「ウィーは元気?」
「え?!」
ウィードからもらった猫のぬいぐるみにウィーと名付けたことは誰も知らないはずだ。
しかしウィードはその名を口にした。
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