第35話
■■執事とウィード
リッタとウィードは会っていないが、ウィードは魔王城に訪れていた。
いつものように自分が訪れて居ることをバレないようにあらゆる魔術魔法を施して。
そうしてウィードは執事・ドルドに絡む。
「何度も申し上げておりますが、謁見の間に通したのは、リッタ様からのご指示ですので。」
「それまではずっと執務室だったのに。リッタ様、理由言ってた?」
「その頃からウィード様を勇者殿とお呼びになりましたが、特に理由は伺っておりません。」
「無理矢理キスしたからかなぁ。」
「は?馬鹿じゃねぇの?」
「え?」
「…失礼。」
ドルドの口調が明らかに崩れてウィードは目を丸くする。
ドルドはごほんと咳払いをしたが、誤魔化せてはいない。
「リッタ様ほどの懐が深く立派な魔王がそんな生娘の様な理由でおま…お前への対応を変えるわけがない。リッタ様は新たな婚約者様と何が何でも結婚したいって話だし、彷徨くなよ。」
口調が明らかに途中から雑になったがドルドは言いたいことを言い切った。
「というのが、魔王様に仕える者の総意にございます。」
本当は勇者を怒らせたら自分など塵芥同然だろうと思いながらも敬服するリッタの幸せを願う気持ちは偽れるものではない。
とはいえ、内緒の訪問をリッタに報告出来ないでいるのは己が塵芥になりたくないからだった。
「結婚するの?」
「当たり前でしょう。」
「なんで俺じゃ駄目なの?」
「は?マジで言ってんの?だる。」
だんだんとイライラしてきたドルドは舌打ちした。
ウィードはびっくりした。
「お前なんて数十年でコロッと死ぬじゃん。ペットと変わんねーっての。」
ウィードは胸が痛む。
リッタにとってはそんな存在なのかもしれないと思うと泣きたくなった。
「なぁポチ。」
「ポチって俺?…だよね。なに?」
「お前、不老不死の魔術が有るんだけど知ってる?」
「フローフシ?」
「死なねー老いねーって、ほぼ禁術なんだけど、それ、書庫の奥の小部屋に隠されてたの見たぞ。」
「不老不死が?!ほんと?!」
「お前は血反吐吐いて頑張ったお陰で魔力はバカみてぇに有るからな。人間に足りない寿命がクリアすればお前にもワンチャン有るかもな。」
「なんでそんな事を教えてくれるの?」
「そこまで答えてやる義理はねぇ。」
「そっか!有り難う!」
リッタがウィードに特別な感情を抱いている事は知っていた。
ドルドはそれが何かはわからないし、リッタが喜びさえすればウィードがどうなっても構わない。
桁違いの魔力保有者だが恐れるほどのものではないとドルドは思っている。
ウィードの後ろ姿を見送ったドルドはやれやれと葉巻に火を点けた。
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