第26話

二人はぬいぐるみ店を出ると武器屋に寄った。

ウィードが行きたそうにした一瞬を見逃さなかったからだ。


壁に掛けられた剣は豊富にある。

のこぎりのような刃のもの、軽く細身に作られた片手剣、柄に宝玉の付いているデザイン等々


真剣に見ている端整な横顔を眺めていたリッタは外に出た。

その剣がいずれ自分に向くのだろうと思ったら、居心地が悪くなった為だ。


武器屋の入口より少しずれて立つリッタに、声が掛けられる。



「この街は初めてかい?案内するけど。」


それは長身の男のものだった。

リッタより頭一つ大きなウィードよりも背は有りそうだ。けれど軟弱そうにも見える。



「いや。あぁ、初めてだが必要ない。」


「初めてなら案内するよ。この街はちょっと入り組んでるからさ。」


「要らん。連れが居る。それにしつこい男は好まれんぞ。」


「…へぇぇ。生意気な口きくじゃん。」


リッタの肩に手を伸ばした。

視界の端で捉えたリッタは舌打ちして相手の動きを封じようと右手に魔力を込める。


男の指先が触れるより、リッタが男の動きを封じるより早く、男の身体が店屋の外壁に叩きつけられた。


距離にして1メートルほどだけど、威力はそれなりで男は苦しそうに呻く。

男の身体は壁に張り付けられたように動かない。



「そのひとに触れるな。」


カツッカツッと革のブーツがゆっくりリッタに近付く。ウィードだ。ものすごく怒りを滲ませている。



「リッティ、何かされた?」

「街を案内すると言われただけだ。」


「へぇ。」


ウィードは男に殺気立つ視線を向ける。

首から上が真っ赤になって苦しそうに口端に泡を溜めている。

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