第22話

「この手をとって。」


リッタが大好きな浅海の色の瞳で見つめて、乞い願うように手を差し伸べる。

リッタは仕方ないと言わんばかりに難しい顔でその手を取った。


ウィードは目を輝かせて布袋から布地を取り出した。



「これは?」

「ポートランダの地方はこういう格好が多いんだ。


リッタに用意した人間のワンピースだ。

ピンクの布地に白い花の刺繍が施されていて腰は赤い布できゅっとリボン結びをする。

裾にはその地方のレース編みが施されていて、可愛いもの好きなリッタもきっと喜ぶと思った。



「私だって人間の服くらい持っている。」


「あれのこと?あれは社交の場で着るドレスだよ。」


くすくす思い出して笑うウィードにリッタは目を丸くする。



「あのドレスで街を歩いてたって本当?」


「お前がこの世に生を受ける前だ。」


「それにしたっておかしいよ。」


「おかしいか?」


「うん。でも高貴なあなたには似合ってた。」


胸元が大きく開いたワイン色のドレスを思い出す。

深い谷間と盛り上がった乳房は、あの姿を見た雄も男も皆殺しにしてしまいたいくらいに魅惑的だった。

勿論スッキリした首筋も露わで…思い出しただけで興奮してしまいそうなウィードは取り繕うように笑う。



「リッタ様が着るものは俺が選んで買うよ。靴から髪飾りまで。」


背後に周りリッタに後ろからワンピースを充てがった。

同時に姿見が現れてリッタとウィードを映す。


その目が雄のようだと思った。

ギラリと目を引かせこちらの緊張の綻びを見逃すまいと狙っている眼だ。


閨事を学ぶ際に目の当たりにしたそれに似ていてわななく。

悟られまいとあからさまにため息を吐いた。



「…これに着替える。」


「手伝おうか?」


「出ていけ!」

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