恋と酔い

第21話

■■リッタと服



リッタがエケアノ達を葬った2日後。

勇者一行はポートランダという港町に辿り着いた。

この国随一の貿易港によってあらゆる国の品や人、そして魔族で賑わう。


ウィードは船酔いのケイネスを宿屋に背負って運んでやる。その間二人の荷物は港近くのレストランでアンジュに見守ってもらっていた。


人が行き交いとても賑やかではあるが、警ら隊によって治安が守られている。だからアンジュに任せられる事だった。



苦しそうにケイネスは自らを背負うウィードに詫びる。



「すみませ…、ウィー、ド、さん…んぐぅ。」

「喋らなくて良いよ。あと少し頑張って。」


苦笑いで背中のケイネスに答える。申し訳無さそうに何度も降りると言われたが、運んでしまったほうが楽だった。


こっそり魔術で浮かせているし、なんなら荷物も二人も運ぼうかとは思った。

しかしウィードは初級魔法しか使えない設定だから二人の前では使えない。



「アンジュを迎えに行く。きみは休んでいて。」

「有り難う、ございます…。」


宿屋のベッドにケイネスを寝かせた。

顔色の真っ青なケイネスにお大事にと言い残してウィードは戻る。


歩いていて良いことが有ったから、こんなトラブルも悪くないやとウィードは思う。



「…てわけなんだ。」


「てわけなんだ、で済むか!魔王をなんと思っている!」


「でもリッタ様、人間の街好きなんでしょ?」


「……。」


「モリーとメリーは一緒に行けて、俺は駄目なの?あなたの子なのに?」


「……。」


「街はいろんな女の子が好きそうな可愛い雑貨屋さんも有るんだよ。世界のものが集まってるって感じで楽しいと思うよ?」


「……女の子が好きそうな雑貨屋さんで私が釣れると思ってるのか?」


「だ…だってリッタ様は人間で言ったら俺くらいなんでしょ?前言ってたじゃん。それに魔族の占いの館も有って人気らしいよ?」


「占いなど…。」


「人と魔族が共同で警備してる平穏な街だ。でももし心配なら俺が守るよ」


「…私は誰かに守られなくても。それに心配などしていない。」


「あなたのためならまばたきの間に死体の山だって作れるよ?」


「物騒な!そんなもんは求めん。」


「どんなに俺を頼ってくれても良いから、俺にひとときの安らぎを与えて。」


「な、なんだそれ。安らぎ?そんなもん私には無理だ。」


「あなたにしか出来ない事だよ。」


甘く微笑むウィードにリッタはたじろぐ。

時折こういう雰囲気になる事が多くなった。


ウィードは勇者になってリッタから離れた事を良かったと思っている。

勇者としての今の方が前より少しくらいリッタに遠慮しなくても良いような気がしているからだ。


首筋に唇を触れさせる度に息を詰まらせ肩をこわばらせて刺激から逃れようとする姿は健気でありながらも扇情的で気が狂うかと思った。


細い腰を後ろから抱き締めていたウィードの腕を退けようともしなかったせいでもある。

 

いくら毒に冒されていたとしても、無防備すぎたリッタに

そろそろ仕掛けていっても良いだろうかとウィードは思うのだ。

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