第14話

ウィードは眉を下げながらもリッタにつられるように口元に孤を描く。

リッタはウィードに洗い浚い話した。



「ダロタスって不敬なやつだね。殺さないの?」


「またそうやって物騒な事を言う。魔王に相応しい婚約者候補とはいえ、あいつと私の格が違いすぎる。仕方がないかもしれない。

でも…、私の婚約者はこの3年で死亡1人と辞退が3人。多いと思えてならん。」


リッタは背中をソファの背もたれに預けた。同じタイミングで目の前のソファに居たウィードはリッタの隣に座る。

ウィードはリッタの手を大切そうに取った。



「俺があなたと結婚しようか?死にも辞退もしないよ。」

 

遠浅の海の色をした瞳がリッタを見つめて手の甲に口付ける。

リッタは魔族の雄がするのを見ている時と同様に顔色一つ変えずに手を預けていた。



「馬鹿言え。勇者と魔王が結婚など。」


通常なら私相手にこんなことをするな等とたしなめるが、それが出来ずにまともに返答している程度にはリッタの心に余裕は無かった。



「……リッタ様は、結婚しなきゃ駄目なの?」


「当たり前だ。世襲ではないが、ノーブル家が王を継承したのは私が3代目だ。一族の期待は多少なりと感じている。」


「じゃあ、がっかりな子供が生まれたらどうするの?殺す?」


「…お前は魔族より物騒だな。どんなでも構わんさ。仮に子供を貶すものが現れるとしたならば私が黙らせる。子供は愛いものだからな。」


「じゃあ俺も?俺も“うい”?」


リッタはウィードをじっと見つめた。



「いや。ちっとも!」


ウィードは絶望の穴に放り込まれた気分になった。

ウィードの知っている愛の付く全てのポジティブな言葉を向けてもらいたいのに。


そうだ。

自分のものにならないときは手籠にしてしまえばいいんだ。

ウィードの恋を知っていて面白がる魔族(雄)から教わった戦略を思い出す。


まず魔術・魔法といった類を出せなくして、キスをする。暴れて大変なら噛み付いて力を見せ付ける。そして服を引きちぎって、そこかしこに触る。

え?そこかしこって…、どこから触るんだ?


ウィードには経験が無い為、混乱している。



「顔が赤いぞ。」


リッタは指摘した。

ウィードはもっと赤くなる。

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