第11話

■■夢と腕



3人の旅は時に宿に泊まることもあれば、野営をすることもある。


アンジュはプライバシーを確保したり高位魔法使いだから暖を取ることだって朝飯前だ。いちいち文句も言わない。

付いてきた女がアンジュで良かったと思う。



5回目の野営をすることになった夜だった。



一人で焚き火の番をしていたウィードはリッタを思い出していた。


きっと今頃はあどけない寝顔で眠ってるんだろうな。あのひとは早寝早起きだから。

俺の名前、呼んでくれないかな。

帰りたかったな。


そんなウィードの思考を遮ったのは鈴を転がすような声だった。



「ウィード様、あの…隣に行ってもいいですか?」


「起きていたんですか?」


「怖い夢を見てしまって。」


涙目でそう言われたウィードは無下にできない。

勇者だからだ。



「…ご迷惑ですか?」


「いえ。大丈夫ですよ。」


座りながら身体に掛けていた毛布に入ってきたアンジュとぴったりくっつく。


前は汗をかいたからとか匂いがどうとか言っていた気がするのに良いのか?

そう思うが本人がくっついてくるので考えるのはやめた。



パチパチと火の爆ぜる音がする。遠くでは梟の鳴き声がした。

ケイネスが内容はわからないが寝言を言っている。

二人の間には沈黙が横たわっていたが、ややしてアンジュは愛らしい声でウィードを呼ぶ。



「ウィード様は、夢を見られますか?」


「たまに見ますよ。」


「…怖い夢もでしょうか?」


なにをとっても庇護欲をそそられるようなアンジュの仕草や声と邪気のない問いかけにウィードは苦笑いする。



「んー、怖い夢は…みないかなぁ。あぁ、でも幼い頃は同じ内容を繰り返しみてましたね。」


「…どんな夢ですか?」


「怖い夢をみた後に怖い夢の話を聞くんですか?」


「…おかしいですよね。」


本当に怖い夢をみたのか湧き出た疑問は追い出した。

面白い話ではないですよと断りを入れて、聞きたそうにしたアンジュに応える。

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