第10話

ごめんね。


魔族や魔物を倒すとき、必ず心のなかで詫びた。

倒した相手にも、それを統べる愛しのリッタにも。


本当は一方的に倒したくなんかない。

人同士だったら裁判があるのに、魔族や魔物が相手だと問答無用で屠る。

彼らの主義主張に目を向けることをせず。

魔物の角や羽根を狙って襲う奴等と変わらない気がする。


でもそれが勇者だから。

リッタが勇者になれと言ったから。


“一人ひとりがきっと役割を持っていて、全うしたときに理想の世界になることが叶う。”

“お前はひとりの人間として、勇者として、幸せになるべきなんだよ。”



全てはリッタと彼女の歯車論のために。

ウィードは命をかけて旅を続ける。



とはいったものの。



「あの、ウィード様。今どうやって斬られたんですか?その剣折れてますよね?それに火が見えたような。」


「あ、あぁ。あれは勇者のみが為せる技なのです。はは。ははは。」


武器装備が粗末でもウィードには魔術が使えた。


魔王城でずっと魔力増強と魔術の体得を続けてきた。


リッタもリッタの周囲の魔族もウィードの努力を知っていた。

そして周囲の魔族は面白がってこっそり割とエグめの魔術を教えてくれた。



「わたしなんの御役にも立てませんね。寧ろお邪魔な気がしてきました…。」

「とんでもない!心強いですよ!」


アンジュのそんな事ないよと言ってほしい素振りを感じ取って答える。


騎士は生活のサポートに使えるけど、高位魔法使いは要らない。

でも言わない。



“勇者は懐が深く思慮深いものだ。”

そうリッタが言っていたから。


100年前の前の勇者のことを思い出してたんだろうと思うと

ウィードの胸がじくじく痛んだ。

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