第9話

一介の城の従事者に絡んでも仕方がないのはわかっているが

あまりにもお粗末だ。



「あの。ウィード様、お似合いですよ?」


頬を染めておずおず話し掛けてくる高位魔法使いアンジュになんとも言えない気持ちになって会釈する。

質素な服が似合うって褒め言葉か?なんて疑問はため息とともに頭から追い出した。



アンジュはウィードに常に好き好きオーラが出ている。

絶対間違いない。ウィードは確信している。


なぜなら上目遣いと髪の毛いじりと不自然なほど目が合うし照れ笑いしてくるからだ。

魔族と暮らすウィードではあるが、そのあたりはバッチリ魔族(雄)から教わってある。


これがリッタだったら。


…無いな!上目遣いとか特に無いな!

“なんだ?言いたいことが有るなら聞いてやるぞ?”

なんて上から目線だ。たまらない。


あぁでも。

ベッドの上で形勢逆転したらどうなるんだろう?

リッタ様も上目遣いなんかしちゃったりして…



「失礼。少し席を外します。」


やばいやばい。股間膨らましてたら勇者じゃなくて愚者になる!


勇者とはいえ、ウィードは健全な18歳だ。




そんなこんなで二人+城の新人騎士の旅は始まった。

騎士はウィードと同じく成人になったばかりのケイネスという青年だ。

主にアンジュの護衛や旅のサポートを任されている。




「ただいまーリッタ様!これ持ってて!」


「は?馬鹿な!伝説の剣を魔王に渡す勇者があるか!」


ウィードは転移魔法でリッタに剣を預け、装備品と同じようなレベルの剣を携えた。


そうすると、ケイネスよりも質素な身なりになった。


仕方がない。苦労人の勇者は金が無い設定なのだ。

本当はリッタが伝説の剣に引けをとらない美しさと防御力をもつ鎧と盾と兜も用意してくれたけれど。

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