第3話

■■議場と自室




「次の議題に参りましょう。えぇと議題3、“オスカブルグの魔界侵略計画と対応について”」


「魔王様、勇者はいつ旅立ちを?」

「陛下、勇者は本当に寝返らないのですか?」


進行役が言うやいなや出席者は口々に魔王に向けた疑問を呈する。



魔界というのは魔物の社会であり、人間の支配する人間界と同じ世界に存在する。


人間界にある国の一つオスカブルグは魔族が人々の暮らしを脅かしているとうそぶき魔王討伐を企てている。


しかしそれは事実とは異なった。

魔族が人々を襲うことは昔から有った。

同様に人々も魔族に危害を加えたり、人が人を、魔族が魔族を襲う事も有った。


目的は分かっている。

オスカブルグ王は勇者を使って魔界を手に入れたいのだ。

魔族には人間にはない力がある。それを手に入れる事は人間に絶大な力が渡るという事だ。



「五月蝿い!」


魔王の一言で水を打ったように静まり返る。

その声はまるで少女のようだが、声に乗る凄みは魔王たるものだった。


魔王はすらりと伸びた美しい脚を組み直す。

きっとウィードなら目が釘付けになるだろう。

なぜならその脚はリッタのものだから。


リッタ。本名リッタ・ノーブルは魔王だ。

魔女王じゃね?ってツッコミはなしでお願いします。



「勇者ウィードは私の傀儡カイライ。お前達が心配することなど塵一つ無い。」


「ですが魔王様、オスカブルグ王は我々の力を手に入れ近隣諸国を、いや、世界を我が物にしようと目論んでいるのですよ!」


「勇者がオスカブルグ王に従い私を討つと言いたいのか?

ならば新しい術をお前の屋敷に試し撃ちしてやろう。そうすればお前も安心出来る筈だ。」


「申し訳ありません。」


「ウィードは勇者である以前に私の子だ。ウィードを疑うはすなわち私への疑義・懐疑と肝に銘じろ。」

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