第31話

松尾くんは非礼な言動に嫌な顔をせず楽しそうに笑う。

松尾くんはいい人なんだと思う。



「でも残念ながら、月間1位は1度だけです。他の2ヶ月はトップ10内でした。一度下がったら凄い勢いで下がりましたし。」


「それでもすごいですよー。ね、りっちゃん。」


「うん!松尾くんはすごいと思う。」


有り難うございますとペコペコする松尾くんが可愛いと思ってしまった。



「それでもメジャーになるのって難しいんですか?」


「菜津!…すみません。」


「大丈夫です。メジャーデビューはしますよ。」


「え?そうなんですか?!いつですか?」


「それはナイショです。」


言ったらヒロロンに言っちゃうでしょ?と松尾くんが笑った。


トイレに行きたい。なっちゃんに会って少ししてからずっと頭の中で燻っている。

でも今日のなっちゃんは奔放すぎるせいで行くのを躊躇ってしまう。


もう、行こう。

そう思ったところでハンバーグプレートやサラダが運ばれてきた。


料理は美味しいし会話も弾んだ。松尾くんは人参が嫌いで添えの人参を残していて、子供みたいだと笑った。



「ト、トイレに行って来て良いですか?」

「はい。」


全員が食事を終えたタイミングで席を立つ。

なっちゃんが失礼な事を言わなければ良いんだけど。

早く戻りたい思いとは裏腹で、トイレがなかなか開かなかった。

やっと戻ると二人は高校の話をしていた。



「なにそれー!動物園の横にある動物園みたいな高校ってあはは。

あ、りっちゃんおかえり。松尾さん面白いんだけど!」

「ふふ。そうなの?」


「ほとんどサル山みたいな高校でした。あほの子ばっか。もれなく俺もですけど。莉久ちゃんは、どんな学校でした?」


「普通の、なんの変哲もない学校でした。やたら行事には熱くなってました。」


「りっちゃん運動会でクラス優勝した時みんなと号泣したって前に言ってたじゃん。あはは。熱すぎてヤバい。」 


「よく覚えてるね。」


「二人は仲が良いんですね。」


「歳も離れてるからぶつかる事はないですね。」


終始にこにこしている松尾くんが私達を送ってくれる事になった。

断ろうとしたら、なっちゃんが宜しくお願いしますと甘えたからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る