牽制する少女

第29話

しばらくメッセージや松尾くんからの通話で連絡を取り合っていた私達は久し振りに会えることになった。


今日は居酒屋に行くだけだけど、それでも嬉しくて、街灯の下へ向かう足は軽い。

ヘッドホンで何かを聴ききながら向かってくる松尾くんとほぼ同時に到着する。



「こんばんは。」

「こんばんは。」


松尾くんが微笑む。それだけなんだけど、久し振りに会えたせいか嬉しい。



「この前マネージャーと入った店が串カツすげー旨かったんで、そこで良いですか?」

「はい!松尾くんはマネージャーが付いているんですね。」


そのマネージャーは3人掛け持ちでいつも迷惑をかけてるんだと笑う。

話をしながら駅の反対側に向かっていた時だった。



「りっちゃんじゃん!」

「なっちゃん。」


私に真っ直ぐ向かって驚いた顔をしているのは制服姿の妹・菜津だった。



「りっちゃんどこ行く…え?駅前で歌ってた人ですよね?!」


私の隣にいる松尾くんに気付いたなっちゃんに松尾くんは固まった。



「…え?そういう?」

「友達だよ。今日お父さんとお母さんはお祖母ちゃん家だって。聞いた?」


ニヤッと私達を見比べるなっちゃんに私は怖い顔をして見せた。奔放な妹は悪びれる様子もない。



「うん!今コンビニ寄ろうと思ってるよ。」



それなら大丈夫と思う私の隣から「あの」と松尾くんの声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る