第24話
「…仲直りの歌に聞こえるな」
「なんでも良いんですよ。受け取り方なんて。」
「まぁな。でももうちょい…」
ヘッドホンをはずして開口一番の問は想定内。
俺は険しい顔に返答する。
「…て、は?ミクちゃん駄目だったのか?」
「莉久ちゃん。駄目とかじゃないですよ。失恋した相手に再会したけど、マジでなんとも思わなくって。つーか、そもそもひきずってないけど。」
「いつ会ったんだ?」
「先週の同窓会。」
「なんだよ。勿体ねぇ。」
「なんも勿体なくないですよ。」
「じゃあなんで失恋を書いたんだよ?」
「今があるから大分色あせたんだって思って。」
それから俺は歌詞の詳細ばかりか、糞みたいな体験談と同窓会で受けた謝罪を語らされた。
池脇さんによって再生されたBGMは、この体験談から生まれた『赤いママチャリ』。
どんだけシュールだよ。なんの罰ゲームだよ。
根掘り葉掘りに、勘弁して下さいと顔を隠した。
なるほどねぇ、と筆記体で何かを書いたが俺には読めない。
そしてまた池脇さんは再生した。
「相変わらず良い声してんなぁ。でも弱い。失恋感が弱い。」
「がっつり失恋なんですけどね。」
「んー。もっと色っぺぇのが欲しいんだよな。声はいいモン持ってるしお前のことだから長いスパンで見てるけど、耳から妊娠しちゃうーみたいなの。」
「耳から妊娠しないですよ。」
「言葉のあやだろ。そんな目で見んな。…ネットとかで見かけねぇ?」
知らねーと思ったが、失恋が弱いのなら駄目かもしれない。
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