第19話
「有り難うございます。頂きます。」
私が言うと、同じように松尾くんも少し頭を下げた。
私は松尾くんにしてるんだけどな。松尾くんも真面目なんだと思う。
「弦買えてよかったです。早く欲しかったから。」
「言ってくださいね。遠慮なんてしなくて大丈夫ですから。」
「はい。」
松尾くんはにこにこ私を見つめている。視線をずらしていたけれど堪えきれずに笑顔を作った。
「松尾くん?」
「朝ね、起きてまずメッセージ開きました。全部夢とか妄想じゃないよなって。」
松尾くんの言いたいことは分かる。でも松尾くんがそんな風に考えていたなんて思わなかった。
だから嬉しい。
「私はまだふわふわしてます。」
「ふわふわ?」
「すごい人と友達になれちゃったって。なんだか現実味がないみたいで。」
「別に俺、すごくはないけど。ふわふわだね。分かる。」
楽しそうに言った松尾くんは、私の名を呼んだ。
「手、貸して?」
「?…はい。」
私は言われたとおりにする。松尾くんは私の手を取るとそっと握った。
指だけじゃなく全体的にほっそりした手は、少しあたたかい。
「実感、持てますか?」
微笑む松尾くんは私に問う。
男の人に手を握られる事に対してこんなにドキドキしたのは、初めてで
はいと返事をする声が上ずりそうになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます