第19話

「有り難うございます。頂きます。」


私が言うと、同じように松尾くんも少し頭を下げた。

私は松尾くんにしてるんだけどな。松尾くんも真面目なんだと思う。



「弦買えてよかったです。早く欲しかったから。」

「言ってくださいね。遠慮なんてしなくて大丈夫ですから。」


「はい。」


松尾くんはにこにこ私を見つめている。視線をずらしていたけれど堪えきれずに笑顔を作った。



「松尾くん?」

「朝ね、起きてまずメッセージ開きました。全部夢とか妄想じゃないよなって。」


松尾くんの言いたいことは分かる。でも松尾くんがそんな風に考えていたなんて思わなかった。

だから嬉しい。



「私はまだふわふわしてます。」

「ふわふわ?」


「すごい人と友達になれちゃったって。なんだか現実味がないみたいで。」

「別に俺、すごくはないけど。ふわふわだね。分かる。」


楽しそうに言った松尾くんは、私の名を呼んだ。



「手、貸して?」

「?…はい。」


私は言われたとおりにする。松尾くんは私の手を取るとそっと握った。

指だけじゃなく全体的にほっそりした手は、少しあたたかい。



「実感、持てますか?」


微笑む松尾くんは私に問う。


男の人に手を握られる事に対してこんなにドキドキしたのは、初めてで


はいと返事をする声が上ずりそうになった。

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