第15話

ドキッとした。知りたいというより踏み込んだニュアンスに感じてしまった。



「面白い事なんて出てこないですよ」と返すと

にやっとした絵文字が一個だけ届いた。



- - - - - - - - - - - - - - - -


『猫ちゃんふわふわそう 可愛いです』


絵文字を一つ送信したあと、俺が猫の画像を送ったら莉久ちゃんから絵文字付きの返信がきた。


この猫・マチルダは高校時代に拾った長毛の雑種だ。

名前は拾った前日に観た古い映画のヒロインから拝借したものだと付け加える。



「マチルダ、お前可愛いって。」


すり寄るマチルダを捕まえた。

組んだ脚に載せたが、気分じゃないらしい。2回撫でられるとニャァと鳴いて離れていった。



あの子とこうして繋がるとは思っていなかった。


莉久ちゃんを思い出す。


俺の歌をちょっとだけ聴いて、ヘトヘトな筈なのにカツカツ歩き出した女の子。


俺が残ってと言ったら緊張していた。

きっと色々と気を遣う子なんだろうと思う。



あの子の元気な顔…笑顔がみたいと思ったのはいつだっただろう。


今日叶ってしまった。

その上、友達になれた。



『本名は松尾柊、松尾静寂で活動しています』

『まつおしゅう、さん。苗字は同じなんですね。』



俺のルーツは変えたくなかった。

誰かには青臭いと言われそうな理由を、彼女は素敵だと言ってくれた。

素直に嬉しい。



澤本莉久サワモトリクです。』

『莉久ちゃん。』


心なしか恥ずかしそうにしていた姿を思い出す。

学年は一つ上で俺より9ヶ月早く生まれたそうだ。



今度、遊びに行きませんか?

聞きたかったけど、忙しそうな莉久ちゃんの負担になるのは避けたい。

がっついて引かれたら台無しだ。


でも



「……会いたいな。」


会って、話がしたい。控えめに笑う姿を明るいところで見たい。


茶色の髪に、あの柔らかそうなほっぺたに

触れ…



「俺キメぇ。」


項垂れた。



会いたいって気持ちは純粋なものだ。

彼女も同じ気持ちだと嬉しい。



End.

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